自然な日本語をめざして~無生物主語編~

英語

みなさんが無生物主語の英文を読むとき、頭の中でどのように翻訳するでしょうか。

先日とあるプロの翻訳者・T氏と、無生物主語の訳出に関するお互いの考え方を議論する機会がありました。

議論の中心となったのは、「英語での無生物主語を、日本語でも主語に置くかどうか」ということです。

どういうことでしょうか。

T氏とお話しした際の文章を例に挙げて、ご説明しますね。

■英語
Walking along the street, Jonathan saw an elderly woman sitting on a bench.

Her black eyes reminded him of his grandmother who had now been dead for a couple of months.

この例文では、無生物主語は”her black eyes”です。

私は普通に、以下のように訳出しました。

■じょにー訳

通りを歩いていたジョナサンは、ある年配の女性がベンチに座っているのを見かけました。

女性のその黒い瞳は、2か月前に亡くなった彼の祖母を思い出させました。

上記の日本語でも、ぱっと見はあまり違和感がないかもしれません。

ただ少し仰々しい感じで、若干不自然に思えなくもないですかね。

一方、T氏は、次のように訳出しました。

■T氏訳

通りを歩いていたジョナサンは、ある年配の女性がベンチに座っているのを見かけました。

その女性の黒い瞳を見て、彼は祖母を思い出しました。祖母が亡くなって、2か月が経っていました。

T氏は無生物主語をそのまま主語にするのではなく、”Jonathan”を主語に置き換えています。

私の「じょにー訳」は、「女性の黒い瞳を見て、Jonathanが彼自身の意思に関係なく祖母を思い出した」というニュアンスがある気がします。

一方の「T氏訳」は、「女性の黒い瞳を見て、Jonathanがある程度自発的に祖母を思い出した」というニュアンスを感じます。

いかがでしたでしょうか。

どちらかが絶対的に正しい…ということはなく、前後の文脈や全体の内容によっても変わってくると思います。

皆さんはどちらの訳がしっくりくるでしょうか。

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