翻訳者を志す理由。それは十人十色、人それぞれですよね。私に関して言うと、もともとは文芸翻訳者になりたかったのですが、一転して今は映像翻訳者を目指しています。この記事では――
- なぜ「翻訳者になりたい」と思ったのか
- どのようにしてその思いを育ててきたのか
- 今、同じ道を歩む読者の皆さんに伝えたいこと
をお話しします。私自身の経験をさらけ出すことで、少しでも「自分も頑張ろう」と感じてもらえたら幸いです。
大学講義で芽生えた“翻訳”へのまなざし
「英文和訳」と「翻訳」の決定的な違い
大学3年次、必修科目としてやむなく受講した翻訳の講義――ここがすべての始まりでした。そこでは、英文和訳と翻訳の違いが以下であると聞かされました。
- 英文和訳: 原文の意味を1対1で対応させる練習(中学・高校の授業でやってきたこと)
- 翻訳: 読者の文化的背景・読みやすさを踏まえて訳文を練る行為
「訳し終えた文章を読んで“日本語として自然か”を問うところからが、真の翻訳だ」
この言葉が目から鱗で、ずっと頭から離れませんでした。「自分がやりたいのは英文和訳じゃなくて翻訳だ」とはっきり意識したのがこの時です。
英文和訳 vs 翻訳
(中学・高校の授業でやってきたこと)
“日本語として自然か”を問うところからが、
真の翻訳だ」
💡 気づきのポイント
この言葉が目から鱗で、ずっと頭から離れませんでした。「自分がやりたいのは英文和訳じゃなくて翻訳だ」とはっきり意識したのがこの時です。
卒論で深まった文芸翻訳への憧れ
『ライ麦畑でつかまえて』邦訳3種を徹底比較
卒論では、サリンジャーの”The Catcher in the Rye“の3つの邦訳――村上春樹・野崎孝・橋本福夫訳――を比較し、同じ原作でも訳者の視点次第で語り口や人物像が変わることを体感しました。
- 語りのテンポ: スラング処理で大きく変動
- 主人公ホールデンの印象: “軽妙”にも“厭世的”にもなる
- 読後感: 訳文のリズムが決定づける
この分析を通じて「言葉選び一つで作品の命運が変わる」翻訳の奥深さにどっぷり浸かり、「いつか自分も物語世界を届ける架け橋になりたい」と強く思うようになりました。
友人の影響で飛び込んだ、映画翻訳という世界
洋画ブームと字幕/吹替の世界
大学卒業後、映画好きの友人に誘われて洋画を観漁るうち、「字幕翻訳者」「吹替翻訳者」という職業を知りました。
- 字幕: 文字数制限との闘い
- 吹替: 口パク合わせ(リップシンク)という制約
- ボイスオーバー: 原音を活かしつつ情報を補完
「映像作品こそ“制約下のクリエイティブ”!」*と感じ、翻訳技術の幅広さに驚嘆。文芸翻訳だけでなく、映像翻訳にも強い興味を抱くきっかけになりました。
映像翻訳手法の比較
それぞれの手法には独特の制約があり、翻訳者の技術と創造性が試される分野です。
比較項目 | 📝字幕翻訳 | 🎭吹替翻訳 | 🎙️ボイスオーバー |
---|---|---|---|
主な制約 |
文字数制限
1秒間に表示できる文字数に厳格な制限があり、簡潔で的確な表現が求められる
|
口パク合わせ(リップシンク)
俳優の口の動きに合わせて翻訳する必要があり、音の長さや口形を考慮
|
原音との調和
原音を活かしながら情報を補完し、視聴者に自然に伝わるタイミング調整
|
表現の特徴 |
簡潔性重視
限られた文字数で最大限の情報を伝える。省略と要約の技術が重要
|
自然な会話調
実際に話しているように聞こえる自然な日本語表現を重視
|
説明的・補完的
原音の雰囲気を残しつつ、理解を助ける説明的な表現を使用
|
技術的要素 |
タイミング調整
セリフの始まりと終わりに合わせた字幕の表示時間を精密に調整
|
音響効果考慮
声優の演技や音響効果を考慮した台本作成が必要
|
音量バランス
原音と吹き替え音声の音量バランスを考慮した翻訳
|
視聴体験 |
原音保持
俳優の本来の声や演技を楽しめる。映像に集中できる
|
没入感重視
字幕を読む必要がなく、映像に完全に没入できる視聴体験
|
情報補完
ドキュメンタリーなどで専門的な内容を分かりやすく伝える
|
主な用途 |
映画・ドラマ
劇場作品、海外ドラマ、配信コンテンツなど
|
アニメ・ファミリー向け
子供向けコンテンツ、アニメ、ファミリー映画など
|
ドキュメンタリー・報道
ドキュメンタリー、ニュース、教育コンテンツなど
|
翻訳者のスキル |
凝縮力
長い内容を短く、的確に要約する能力。語彙選択の精度
|
演技理解
声優の演技を理解し、自然な台詞を作成する感性
|
説明力
複雑な内容を分かりやすく説明する能力
|
翻訳技術の幅広さに驚嘆する世界
🎬 映像翻訳の魅力
文芸翻訳だけでなく、映像翻訳にも強い興味を抱くきっかけに。それぞれの制約が生み出すクリエイティブな表現の可能性は無限大です。
社会人×スクール通学──スキマ時間で挑戦中
働きながら学ぶ工夫
現在は会社員としての業務をこなしつつ、夜間・週末に映像翻訳スクールの講義を受けています。
- 時間管理
- 朝の通勤電車、英語ポッドキャストを聴く(朝は元気ないので、とにかく聴くだけ)
- 夕の通勤電車、本ブログ記事の書く(仕事での気づきや課題を思い出しながら)
- 帰宅後、10分だけでも課題に取り組む(ちょっとだけでもいいから…という気持ちで)
- モチベーション維持
- 翻訳スクールのクラスメイトとの進捗共有で、やる気アップ(みんなやる気があるので、引っ張られる)
- イヤになったときは、大好きな映画を観る(翻訳者になりたいという初期衝動を思い出す)
学びを仕事へ、仕事の経験を学びへ――双方のシナジーを感じながら、「プロ」に近づいていけるように少しずつ取り組んでいます。
スキマ時間活用の学習タイムライン
(朝は元気ないので、とにかく聴くだけ)
(仕事での気づきや課題を思い出しながら)
(ちょっとだけでもいいから…という気持ちで)
実践的な学習とフィードバック
(みんなやる気があるので、引っ張られる)
まとまった時間で深く取り組む
ブログ記事の構想を練る
(翻訳者になりたいという初期衝動を思い出す)
⚡ 時間管理のコツ
💡 現実的なアプローチ
完璧を求めず、「ちょっとだけでも」という気持ちで継続することが大切。スキマ時間を積み重ねることで、確実に前進できます。
──双方のシナジーを感じながら、
「プロ」に近づいていけるように少しずつ取り組んでいます
同じく翻訳者を目指す皆さんへ
翻訳を志す理由は人それぞれですが、「言葉の壁を越えて何かを伝えたい」という想いは共通だと思います。私自身もまだまだ道半ばですが、
- 気づきを行動に移す
- 興味を深掘りして専門性を磨く
- 仲間と励まし合いながら継続する
――この3つを意識し始めただけでも、以前より勉強を継続できるようになったと思います。
この記事が、今まさに学んでいる・学び始めたの皆さんの背中を少しでも押せると嬉しいです!
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